シリコン量子ドットを用いた高忠実度なスピン量子ビット
はじめに
量子コンピュータの実現のためには、高忠実度な量子ビットが必要となります。
私たちは微小磁石を使って電子スピン操作を高速化し、自然同位体比のシリコン量子ドットにおいて高忠実度な量子ビットを実現しました。
実験
右図左側に試料の電子顕微鏡写真を示します。小さい青丸の位置に量子ビットとなる量子ドットが形成されます。この量子ドットの電荷状態を大きい青丸の量子ドットセンサーで検出します。
このセンサーで検出した量子ビットの電荷状態が右側の図です。2つの量子ドットの中にそれぞれ電子が1個だけトラップされた状態が実現されています。この状態を量子ビットとして使用することができます。
次に試料に高周波をかけることによって、電子スピン共鳴を引き起こします。高周波電場と試料の上に設置された微小磁石により電子スピン共鳴が生じます。
右図左側が観測された電子スピン共鳴で、2本の線が2つの量子ドットそれぞれに対応します。
右図右側が単一電子の回転操作をより詳細に調べた結果です。シェブロン形状と呼ばれる特徴的なパターンを明瞭に観測することができます。
実験においては35MHzまでのラビ振動が観測され、また忠実度の評価を行ったところ、99.6%という自然同位体比のシリコン量子ビットにおける最高値を実現することができました。
まとめ
私たちは微小磁石を用いた電子スピン共鳴法をシリコン量子ドットに適用し、自然同位体比のシリコンにおいても忠実度な量子ビット操作を実現しました。
これらの結果は量子コンピューティングの工学応用に向けても重要となります。
参考文献
“A fault-tolerant addressable spin qubit in a natural silicon quantum dot”,
Kenta Takeda, Jun Kamioka, Tomohiro Otsuka, Jun Yoneda, Takashi Nakajima, Matthieu R. Delbecq, Shinichi Amaha, Giles Allison, Tetsuo Kodera, Shunri Oda, and Seigo Tarucha,