試料作製技術:微小デバイスと静電気

微小デバイスを作製したら、楽しい測定の時間です。ただ、微小デバイスは静電気で簡単に壊れてしまいますので注意が必要です。

壊れたデバイスの早期発見

壊れたデバイスの測定で貴重な時間を失ってしまわないように、測定前に次の確認をしましょう。

1. 全てのゲート、オーミックの抵抗を確認しましょう。

測定端子以外の全ての端子をグラウンドに落として、測定端子とグラウンドとの間の電流を測定するのが簡単です。

印加電圧は-1 mVから+1 mVで十分です。(テスターは数百mVを印加してしまいますので使ってはダメです。)

2. ゲートの抵抗が小さい場合は、2DEG、他のゲートのグラウンド接続を外し、どのルートでリークしているのかを調べましょう。

ゲート間の抵抗が1 MOhmよりも小さくなっているようなら、デバイスが静電気で壊れている可能性があります。

早々に別のデバイスに切り替えるのが良いかもしれません。

デバイスの故障原因の解明

次の実験に生かすため、どうしてデバイスが動かなかったかを確認しましょう。

面倒ですが、次の実験を成功させるためには重要なプロセスです。

1. 全ての端子の抵抗の情報を元に、「このゲートとこのゲートがつながってるかも」といった予想を立てておきましょう。

2. 走査型電子顕微鏡等を用いて、実際にデバイスを観測してみましょう。

右図に静電気で破損した量子ドットデバイスの写真(左:正常、右:破壊後)を示します。破壊後にはゲート電極が溶けてお互いにくっついたり、一部は飛び散って無くなったりしています。

デバイスが小さく、静電気電流による発熱等が局所的に集中するため、ゲートが破壊されると考えられます。

静電気でデバイスが破壊されているのが確認できたら、次のデバイスを壊してしまわないように対策が必要です。

静電気対策

ボンディングやデバイスの交換等、デバイスを扱う際に役に立つ静電気対策として次のような手段があります。

1. 帯電しやすい服装を避ける。

冬場のセーター等はどうしても帯電しやすいので避けましょう。

また通常の衣類についても洗濯の際に柔軟剤を使う等で、静電気を起こしにくくできます。

2. リストストラップを利用して人体が帯電するのを防ぎましょう。

使用前に人体の接地抵抗がリストストラップをとおして数MOhmとなっていることを確認しましょう。

3. イオナイザーを利用して、生じてしまった静電気を中和しましょう。

イオナイザーはイオンを発生させて、静電気を中和する装置です。

この1. から3. でだいたいの場合の静電気破壊を防げると思います。

これでもダメな場合は、

4. 衣類の帯電防止スプレーを利用しましょう。

5. ピンセット等の工具類をすべて静電気対策したものに交換しましょう。

静電気対策(ESD)マーク付きのものが市販されています。

6. 加湿器等を用いて湿度をコントロールしましょう。

7. 静電靴、静電床、静電気対策椅子等の導入を行いましょう。

8. 表面電位計を用いて怪しい過程の洗い出しを行いましょう。

椅子からの立ち上がり、机、樹脂トレイ(静電気対策してないもの)等をワイプで拭く、爪楊枝を容器から引き抜く、テープをはがす等は多くの場合帯電を引き起こします。

静電気をうまく処理して、楽しい実験生活を実現しましょう!